フリー哲学者ネコナガのブログ

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『イースター島を行く─モアイの謎と未踏の聖地』野村哲也─イースター島を歩こう

 野村哲也『カラー版 イースター島を行く―モアイの謎と未踏の聖地』を読む。読むというか、基本的に「見る」本である。だからカラー版。しかし、新書だから1000円で買えるのが売りである。写真集は、もちろん写真家からすれば「これがいい」というサイズやレイアウトがあるのだろうが、基本的にいい写真の魅力はサイズが小さくなっても失われないというのが私のささやかな持論である。

 

 さて、イースター島と言えば「モアイ」だろう。ゆえにサブタイトルにもモアイとあるが、著者が強調しているのは、イースター島にはモアイ以外にも魅力がいっぱいあるということである。そこで、島内すべてのモアイを網羅していながら(やっぱりモアイは外せないんじゃないか)、モアイ以外の謎や魅力を紹介しているのが本書の特徴である。

 構成としては、ほぼ全ページにカラー写真があり、眺めるだけでも楽しいものとなっている。これは中公新書カラー版に共通の特徴である。だから解説文は少ないが、それでも本文は単なるキャプションではなく、著者のイースター島愛がつまった情緒を感じさせる文章となっている。通読することでおすすめの「巡り方」を疑似体験できるようになっているのもユニークなところだ。

 読んでいると、あたかも行ってきたように、住んでいる人や「住んでいた人」の息吹が感じられる。小さな島でも、そこには社会があり、文化があり、歴史がつまっているのである。著者は、歴史についても一章を割いて語っているが、実際、イースター島の歴史は社会科学的にも常々興味の対象となっている。サイズが小さい社会の方が変化が速いから、そこで起こったさまざまな事実が他の社会の動向を予測するのに使えるかもしれないからだ。

 有名なのは、イースター島でのかつての文明崩壊を地球の縮図とみるものだろう。これはジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊: 滅亡と存続の命運を分けるもの』でも有名になったが、要するに住民による森林破壊が文明崩壊を導いたとするものだ。つまり、元々小さな島で樹木の数には目に見えて限りがあるにもかかわらず、カヌーを作るためとか、モアイを運ぶためとか、人間の都合で木を伐りすぎたという説である。それが人類の行く末を暗示しているという。

 ただし、これはエコ運動のプロパガンダとしては使えそうだが、今では別の結論が定説になりつつある。本書でも語られているが、テリー・ハントとカール・リポという二人の考古学者が唱えたものである。曰く、人間とともに海を渡ってきたネズミが、天敵のいない小さな島で大量増殖したため、ヤシの実が食い荒らされ(ヤシの木は成長がとても遅い)、結果として一気に森林が失われてしまったとするものだ。これは、ヤシの実の化石にネズミのかじり跡がついていることからも裏付けられるという。

 もっとも、ダイアモンドの本も、よく読んでみるとちゃんと「おそらく」とか「かもしれない」とかいった表現付きの文章になっているから、これは広まるうちに誇張されたという面もあるだろう。実際、ダイアモンドは「ポリネシアの島々で森林破壊の程度にこんなにもバラつきがあるのはなぜか」と、カギとなる問いをすでに発している。答えはネズミだったかもしれないのである。

 あるいは「あんなに重いでかいモアイをどうやって運んだのか」という古くからある謎についても、最近は新たな説に落ち着きつつある。これも前述の二人の考古学者が実験したものだが、「モアイは自分で歩いた」というのだ。もちろん本当に歩いたわけではなく、実はモアイを立てたままロープを括りつけて、うまくバランスをとりつつ両側から交互に引っ張ると、モアイは自重で前に進むのである。それが歩いているように見える。ちなみに、この再現実験の映像は公開されている。


Easter Island moai 'walked'

 そしてモアイをこんな風に運んでいたなら、「モアイを運ぶために木を伐った」というのは説得力がなくなり、前述のネズミ説もますます信憑性を帯びてくるわけである。

 それから、私がずっと興味を持っているのはロンゴロンゴ文字である。文字っぽい模様という説もあるが、未解読文字の一つである。もっとも、興味を持っていると言いつつ、そこまでのマニアではないから、自分で解読を試みたりはしていない。要するにただの古代ロマンチシズムである。こういうのは一日の終わりのリラックスタイムに思いを馳せるとすごく楽しい。みなさんもどうでしょう。おしまい。

 

カラー版 イースター島を行く―モアイの謎と未踏の聖地 (中公新書)

カラー版 イースター島を行く―モアイの謎と未踏の聖地 (中公新書)

 

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