フリー哲学者ネコナガのブログ

いろんなアイデアを解説したり、本を紹介したり、エッセイを書いたりしています。

「人工知能」への誤解はなぜ生まれるのか─人工知能(AI)とは何か

www.itmedia.co.jp IT調査会社のガートナージャパンが、「人工知能に関するよくある誤解」10のリストを発表した(http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20161222-01.html)。「ガートナーの顧客の間で」ということだが、かなり一般的な誤解のリストにな…

脳は30歳までは大人ではない─あるいは「最近の若者は」問題の謎

edition.cnn.com 科学者が脳の研究を始めたころは、できるのは専ら死んだ人の解剖であった。それで構造はわかるが、どこがどうはたらいているのかはわからない。そこでは、死んでいる人の脳と生きている人の脳を区別して論じることができなかった。 前世紀で…

サイバー空間でも自分の身は自分で守ろうという話─あるいは「ホワイトハッカー」とは何か

www.itmedia.co.jp パソコンや携帯電話といった形でコンピュータが一般に普及して、あるいはネットにあらゆる個人情報が乗り始めてからもうかなりの時間が経ったのではないかという感じだが、当初から言われている基本中の基本を未だに守っていない人があま…

尻は顔なり─チンパンジーは尻認知細胞を持つか

www.sciencenews.org journals.plos.org 先日の記事(動物の情動や表情と情動の関係など~「情動」とは何か)で情動と表情の関係、あるいは他の動物におけるそうした関係を探れる可能性などについて書いたが、ちょっと関連する話がニュースに出ていたので紹…

動物の情動や表情と情動の関係など─「情動」とは何か

natgeo.nikkeibp.co.jp ネズミの「幸福感」を外から知る指標の一つとして「表情」、具体的には耳の赤くなり具合を見る、という方法があるかもしれないことがわかったらしい。もちろんまだハッキリしたことを言うのは難しいのであろうが、動物認知(animal co…

『量子物理学の発見─ヒッグス粒子の先までの物語』レオン・レーダーマン/クリストファー・ヒル

レオン・レーダーマン/クリストファー・ヒル『量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』を読む。 両著者ともに一般向け科学啓蒙書を著している物理学者で(レーダーマンは実験物理学者、ヒルは理論物理学者)、このコンビは『詩人のための量子力学―レ…

なぜ「科学」はいくつかの分野に分かれているのか─どこまで科学で扱えるのか

nekonaga.hatenablog.com 先日の記事「ものすごくざっくり言うと「科学」とは何か」を踏まえる形で、科学についてもう少し書いてみたい。前回見たところによれば、理念としての「科学」の特徴は次の通りである。 自然現象を、背後にある「法則」の存在を探る…

ものすごくざっくり言うと「科学」とは何か

「科学とは何か」ということをものすごくざっくり描いてみたい。もちろんこれについて何らかの正しい答えがあるわけではないが、多くの科学者・科学哲学者が同意しているであろうという範囲においてみてみることにする。 最初に言葉を見ておくと、科学(scie…

人間以外の動物に「意識」はあるのか─動物の心がわかるか

現代社会では、特定の仕事に従事している人を除いては、人間以外の動物に目を向ける機会はあまりない。機会がないというか、必要性がないことが多い、と言ったほうがいいだろう。あるいは動物にふれていても、どこまで動物として扱っているかは別の問題であ…

他の動物が道具を使うのを見た人間が人間について考えたと考えられること

www.youtube.com 上の動画は、ハワイにいる珍しいカラスが道具を使っているところである。最近発表された論文(https://www.nature.com/nature/journal/v537/n7620/full/nature19103.html)に関連する動画だが、ここではその研究の詳細は脇に置くとして、と…

「良書」とは何か─本であることの利点が活かされているか

「良書」とは何かについて、少し考えてみることにしたい。ちなみに、日本で出版されている本に限る話である。 まず辞書で「良書」を引くと、いくつかみてみたが、いずれも「読んでためになる書物」と出ていた。まあ、辞書だから仕方がない。これなら「良い書…

「教養」とは何か─教養観のいろいろ、あるいはなぜ教養が必要なのか

「教養とは何か」。一見すると不毛な議論になりそうな問いではあるが、これについて考えられる限り考えてみたい。いくつかの議論を参照しつつ、なるべく多様な「教養」観を挙げてみることにするが、特に目新しいことを言うつもりはないので、流し読みしつつ…

なぜ自然は汚くないのか、あるいは自然は本当に美しいのか

「なぜ自然は汚くないのか」。ありていに言えば「なぜ自然は美しいのか」だが、ともかくこれについて考えてみたい。さしあたり「自然とは何か」という問題もあるが、これについては深く考えず、日本語における最も一般的な用法としての「人工物がまったく、…

借りた本に書き込みをする人は何を考えているのか(文字通りの意味で)

「借りた本に書き込みをする人は何を考えているのか」。人に本を貸して、返ってきたら書き込みがなされていて、「何を考えているんだ」と思った経験のある人はそれなりにいるだろう。あるいは、逆にあなたは「借りた本に書き込みするのが問題なのか」と思っ…

「重複表現」の問題(2)なぜ「違和感を感じる」に違和感を覚えるのか

nekonaga.hatenablog.com 「重複表現」について、前回はそれを嫌うことの妥当性についてみてみたが、今回は「なぜそれが生じるのか」も含めてもう少し真面目に考えてみることにしたい。具体的には、なぜわれわれは「頭痛が痛い」という言葉を聞くと頭が痛く…

『文明を変えた植物たち─コロンブスが遺した種子』酒井伸雄

酒井伸雄『文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子』を読む。 周知の事実だが、現代のわれわれにとって身近な植物の中には、アメリカ大陸原産のものが決して少なくない数ある。これが何を意味しているかというと、それらはいずれも、大航海時代にヨー…

ヒトの脳という見えないフィルター─マーク・チャンギージー『ひとの目、驚異の進化』『<脳と文明>の暗号』

理論神経生物学者、マーク・チャンギージーの研究をご存じだろうか。いつかふれようと思って機会を逃していたのだが、ここで簡単に紹介しておくことにしたい。 チャンギージーの著作で邦訳されているのは『ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわ…

「重複表現」の問題(1)「頭痛が痛い」は間違いなのか

「重複表現」というものがあるが、これについてとりとめもなく考えてみたい。 重複表現といえば、まず思いつくのは「頭痛が痛い」かもしれない。これは、最初の「頭痛」という言葉にすでに「痛い」という意味が入っているから、意味が二重になっている。だか…

シェイクスピアはどこへ消えたのか(追記あり)

4月になったので、シェイクスピアについてふれてみたい。なぜ4月かといえば、この4月がシェイクスピアの没後400年にあたるからである。シェイクスピアは、1616年4月23日に世を去った。死因については諸説あってよくわかっていないが、少なくとも老いて寿命で…

「印象に残っている新人」

今週のお題「印象に残っている新人」 たまには、と思ってはてなブログの「今週のお題」に則って書くことにしたら、今週のお題は「印象に残っている新人」とのことである。これはどうも、書けそうもない。 なぜなら、「新人」では選択肢が多すぎるからである…

ショーペンハウエル『読書について』には結局何が書いてあるのか

ショーペンハウエル『読書について』(1851)を再読したので、それについてふれてみたい(私の中では「ショーペンハウアー」の方が自然なのだが、引用文献の表記に従うことにする)。読書論の古典として読み継がれているものだが、基本的には現代でも通用す…

ダーウィン進化論の何がすごいのか─ゼロからわかるオリジナルの「進化論」

さて本題だが、もっとも、実は上のタイトルの話は余談に過ぎるものではなく、言ってしまえばこのタイトルが、そのままダーウィン進化論の要約なのである。その意味では素晴らしいタイトルだ。つまり、生物は絶えず「生存闘争」をしているので、必然的に「生…

ノーベル経済学賞受賞者はなぜロバートか

本など読んでいると「ノーベル経済学賞を受賞した○○が~」みたいな記述に出くわすことは少なくないと思うが、「経済学賞にロバート多すぎではないか」と思ったことないでしょうか。 個人的には何度もそう思って、いつも放っていたのだが、何度放っておいても…

コサ語学習者はコサ語の難しさに苛立っているわけではないという話

natgeo.nikkeibp.co.jp マッコウクジラは、クリック音でコミュニケーションしていて、方言まであるらしい。言語学をかじっている人なら、コミュニケーションのために発する音だからと言ってすぐに「言語」と言ってよいかという点はつっこみたいのが山々かも…

イースター島の歴史が人々の愚かさによる崩壊の歴史だと言う人と、そんなはずはない、もっといろんなストーリーがつまった歴史だと言う人の議論の歴史

nekonaga.hatenablog.com 先日イースター島のことを少し書いたが、そのあとScience Newsからイースター島に関する新研究論文があるとニュースが流れてきた。先日の記事でも登場したカール・リポ教授が、考古学の論文誌「Antiquity」上で最新の研究成果を発表…

『イースター島を行く─モアイの謎と未踏の聖地』野村哲也─イースター島を歩こう

野村哲也『カラー版 イースター島を行く―モアイの謎と未踏の聖地』を読む。読むというか、基本的に「見る」本である。だからカラー版。しかし、新書だから1000円で買えるのが売りである。写真集は、もちろん写真家からすれば「これがいい」というサイズやレ…

動物たちは冬をいかに生き延びているか─そして人間たちは

www.sciencenews.org 今週末は全国的に寒いようだが、ちょうどScienceNewsに「動物たちが冬を生き延びる8つの方法」というのがあった。寒さに限る話ではないが、紹介しつつ、これについて考えてみよう。 1.湯につかる 名古屋は地獄谷野猿公苑のジャパニー…

デズモンド・モリス『サル─その歴史・文化・生態』─ヒトとサルの奇妙な関係

デズモンド・モリス『サル:その歴史・文化・生態』を読む。必要あって昨年末から読書テーマの一つがサル学なのでその延長で読んだが、そういえば今年は申年であった。新年はゲン担ぎで猿股が売れているとかなんとかいう話だが(違うかもしれない)、私として…

誰がティラノサウルスを知っているのか

natgeo.nikkeibp.co.jp またTレックスがニュースになっていた。サイエンス系ニュースは定期的にチェックしているが、もはやニュースでもなんでもない感じでTレックスも定期的にあらわれる。 もちろん記事になるからには何か新しい情報があるわけだが、いつ…

「思想」とは何か─単なる「考え」とはどう違うのか、あるいは「哲学」や「宗教」との関係について

「思想」とは何か。いわゆる「考え」や「考え方」とはどう違うのか。あるいは、「思想」という言葉と関連性が深そうな「哲学」や「宗教」という概念と対比すれば何が言えるのか。これについて考えてみたい。「思想」と呼ばれる様々なものを理解するには、「…


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