フリー哲学者ネコナガのブログ

いろんなアイデアを解説したり、本を紹介したり、エッセイを書いたりしています。

新訳 ジョージ・バークリー『人知原理論』─存在するとは、知覚されているということである

ジョージ・バークリー『人知原理論』の新訳(ちくま学芸文庫、宮武昭訳)が刊行されていたので読んでみた。 バークリーと言えば、一般的にはあまり知られていないが(しかし、実はカリフォルニア州バークレーは彼の名に由来する)、哲学史に親しい人にはおな…

ダーウィン進化論の何がおかしいのか─ゼロからはわからない発展的な進化論

nekonaga.hatenablog.com この記事は以前に書いた上の記事の続きであるので、少なくともその記事を読んでからお読みいただければ幸いである(記事タイトルの「ゼロからはわからない」は、前提知識なしで読まれることを想定した前回記事の「ゼロからわかる」…

ロック『統治二論』(市民政府論)を読む─なぜ政治的社会が必要なのか

nekonaga.hatenablog.com 以前、モンテスキュー『法の精神』を簡単に紹介したが、現代のわれわれにとっても重要である社会思想家についての教科書的説明を見ていると、分量が限られているのは仕方ないにしても、どうも各思想家のアイデアを比較して「差」を…

哺乳類はなぜ海で大型化するのか

www.sciencedaily.com クジラはなぜ大きいのか。地球上で最大の動物がシロナガスクジラであることはそれなりに知られているが(時に体長30メートルを超える)、実はこれは今生きている動物の中でというだけでなく、現在知られている限りでの史上すべての動物…

ボノボとチンパンジーは意思疎通できるか─ジェスチャーはどこから来たのか

www.youtube.com ボノボとチンパンジーがそれぞれ意思疎通のために使っているジェスチャーのうち、かなりのものが二種の間で共通していることがわかったらしい(ひとまず上の動画が便利だが、元の論文は「Bonobo and chimpanzee gestures overlap extensivel…

『数学 新たな数と理論の発見史』トム・ジャクソン編─何よりも数学を楽しむために

トム・ジャクソン編『歴史を変えた100の大発見 数学 新たな数と理論の発見史』を読む。何か役に立つことを学びたいというのではなく、純粋に知的な興味から数学に触れてみたいという人に第一におすすめしたい一冊だ。トピック別でカラー・大判・図解入りだが…

モンテスキュー『法の精神』を読む(2)「権力分立」はなぜ重要なのか

モンテスキュー『法の精神』を紹介することにして、前回は同書の基本的な射程と、根本となる考え方を簡単にみた。今回は、前回触れずに終わった、あまりにも有名だが十分に理解されているとは言いがたい「三権分立」、ないし「権力分立」についてみておくこ…

モンテスキュー『法の精神』を読む(1)「法」とは何か

1月も半ばだが、18日はシャルル=ルイ・ド・スゴンダの誕生日だそうである。そう言ってピンと来る人はあまりいないであろうが、一般的には「モンテスキュー」(1689-1755)として知られている人物のことである。誕生日はたまたま知ったが、これを機会に、モ…

「定義」の重要性について少々、UFOなど交えながら

「定義」というのものの重要性について、少しみてみることにしたい。ロジカルな議論の世界では当然でも、一般的にはほとんど意識されていないと言えることである。 最初に、いわゆる「UFO」に関する議論を例に挙げてみよう。例えば、「UFOは存在しない」と主…

『地球進化 46億年の物語』ロバート・ヘイゼン─「秋の夜長に楽しみたい本」

今週のお題「読書の秋」 はてなブログの「今週のお題」で、「秋の夜長に楽しみたい本」ということである。もっともいくら「夜長」でも、よほどおもしろい小説でもなければわざわざ分厚い本を読みたい人は少ないであろうから、読むという作業よりもその内容を…

「哲学」「哲学者」「哲学書」とは結局何なのか

「哲学は役に立たない」。一般的にはそう言われることが多い(とされている)。しかし、哲学者ならこれに対してこう答えるはずである、「はい、その通り」。 これは、面倒な人を避けるための一つの返し方でもあるが、要するに反論はしないだろうということで…

ペンギンにとってクラゲとは何か

Who’s Eating Jellyfish? Penguins, That’s Who - The New York Times https://www.nytimes.com/2017/09/29/science/penguins-eating-jellyfish.html?smid=tw-nytimesscience&smtyp=cur 全ての生物が行っていることと言えば、当然ながらエネルギーの「摂取」…

コウモリはなぜ壁にぶつかったりぶつからなかったりするのか

コウモリはなぜ壁にぶつかるのか。テクノロジーの分野では、むしろコウモリは「なぜぶつからないのか」として参考にされたりしているのが、同様に「なぜぶつかるのか」を問うこともできるだろう。というより、元はと言えばどちらにも注目すべきかもしれない…

ダニエル・カーネマン『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』、『ファスト&スロー』(上・下)

ダニエル・カーネマン『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』(以下『心理と経済』)と『ファスト&スロー(上)・(下)』(以下『F&S』)を再読したので紹介することにする。一般的にはこの分野は実用的側面に注目して読まれがちだが、人間本性の探究という…

言語は認知や思考を規定するのか─「言語相対論」「言語決定論」の歴史と議論の行く末

「言語は認知や思考を規定するか」というのは、現れては否定されるということを繰り返している、言わば「ポピュラーな議論」である。この発想自体はドイツのロマン主義にはじまるものだとされているが、有名なのは「サピア=ウォーフの仮説」だろう。これは…

「信じる」ということについて

「諦めなければ必ず~」という言い回しがある。典型的には、立場的に上の者が下の者を鼓舞したり、仲間同士で元気づけたりする際に使われるものである。もっとも、言っている張本人がすでに諦めていて、実際上は何の効力も持たないことも多い。 とは言え、効…

狂人・奇人・変人

「狂人」という言葉がある。一方、「奇人」もあれば「変人」もあるだろう。任意に選んだが、このように並べてみると、どうも「変人」というのが最も一般的である。実際、「変人」は最も一時的な状態に過ぎないようなニュアンスがある。明日になったら変人で…

「三段論法」の何が問題か

「三段論法」というものがある。最も古典的な例を挙げると、「ソクラテスは人間である」という小前提と「全ての人間は死ぬ」という大前提から、「ソクラテスは死ぬ」という結論を導くというものである。三段論法にも様々あるが、ここでは専らこの型を「三段…

「固有名」とは何か─固有名に「意味」はあるのか

「固有名」とは、同じ種類の他のものと区別するために、ある特定のものにつけられた名前である。例えば「ドナルド・トランプ」と言えば、彼が属する「人間」というものの中から彼のみを指示することができる。もちろん同姓同名の人もいるが、文脈があれば常…

「自由」とは何か─「自由」とは何でないか

「自由」とは何か。あまりにもざっくりした問いだが、いくつかのことを整理しつつ、これについて考えてみたい。 まず言葉についてみると、日本語における「自由」は、J・S・ミルの『On Liberty』(『自由論』)の訳語として定着したものであると言ってよい…

「サルでもわかる」について

「サルでもわかる」あるいは「サルにもわかる」というのは、何かのタイトルの一部としてよく見かける言葉である。これは、意味としては「バカにもわかる」のことだと言って反対する人はまずいないだろう。 もっとも、それならサルがバカであるなどと誰が言っ…

なぜ「神は存在しない」と言えるのか

なぜ「神は存在しない」と言えるのか。この問いは、二つの場合に成立するだろう。一つは、誰かが「神は存在しない」と主張しており、それに対して、その主張の根拠を問うている場合である。これは当事者でなければ用がない論争であり、実際、ここで扱うのは…

「矛盾」とは何か

「矛盾」とは、避けられるべきものである。このことは、あらゆる議論の前提として、ほとんど無条件に了解されている。しかし、われわれが端的に矛盾を避けるべき根拠はあるのだろうか。そもそも、それは避ける「べき」ものなのだろうか。あるいは避ける「し…

「話が通じる」ことについて

「因果関係とは何か」の記事で、ある事象Aとある事象Bの間に「因果関係」というものを(AとBに何が入ろうが)、認めることもできるし、認めないこともできるという考えを紹介した。余談から入るが、雑な言い方が許されるならば、これが「科学」と「哲学」の…

「因果関係」とは何か

「因果関係」とは何か。因果関係と言えば、よく言われているのは「相関関係と因果関係を区別せよ」である。これは、統計の入門書には必ず書いてある。では、ある事象Aとある事象Bの関係が、「相関関係」なのか「因果関係」なのか、われわれにどうやって区別…

「論理的である」とはどういうことか

「ポチは犬である」。ゆえに「ポチは動物である」。こういう推論がありうる。これは、「ポチは犬である」という前提から「ポチは動物である」という結論を導いているようで、論理的に見える。しかし、これは少なくとも一つの意味では「論理的」ではない(「…

「共感」はそんなに重要か─Paul Bloom『Against Empathy』

ポール・ブルーム『Against Empathy: The Case for Rational Compassion』を読む。邦訳されていないが(たぶんされるはず)、いい本だったので紹介したい。 (追記:2018年2月邦訳刊。高橋洋訳『反共感論―社会はいかに判断を誤るか』)。 本書は一言でいえば…

なぜいろいろなものが見出されるのか─パターン認識と複雑性

www.nature.com 人間の脳が持つ基本的な、しかし奥深い機能の一つに「パターン認識」がある。こうした能力を誰もが当然のものとして備えているのはもちろん、人類が生き延びるために必要だったからであるが、つまりこの能力は生存に役に立つから進化してきた…

なぜ何もないのではなく何かがあるのか

www.scientificamerican.com 「なぜ何もないのではなく何かがあるのか(why is there something rather than nothing?)」。これは、ウィキペディアにもマニアックなエントリーがあるが、昔から多くの人間を悩ませてきた、広い意味での哲学における有名な問…

進化論の誤解(2)「ヒトはサルから進化した」について

nekonaga.hatenablog.com 突然だが、来たる2月12日(今年は日曜日)が何の日かご存じだろうか。私も知らなかったのだが、海外メディアのニュースを見ていたら「Darwin Day」というのがあるらしく、これは進化論でおなじみのチャールズ・ダーウィンの業績を祝…


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