フリー哲学者ネコナガのブログ

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我々は彗星から来たのか 我々はアミノ酸か 我々はどこへ行くのか

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 欧州宇宙機関の無人探査機「ロゼッタ」が、彗星のコマからアミノ酸の一種である「グリシン」を見つけたらしい。あわせてリンも検知されたとのことで、生命の「材料」が明白に彗星からみつかったとして話題になっている。

 これまでにも彗星のコマ(表面が蒸発して生じる大気部分)からグリシンが検知されたことはあったが、地球上で汚染された可能性が捨てきれなかったのに対して、今回は宇宙空間にあるのを直接検知したということだから決定的である。

 

 さてこうしたニュースからもわかるが、生命の起源が地球外にあるという考えは、近年ますます主流になってきていると言えるだろう。いわゆる「パンスペルミア説」だが、生命の萌芽が隕石や彗星に乗ってきたという考えは、もはや珍しくはない。

 そもそもパンスペルミア説は、証拠がなければ空想、というわけでもなく、それは確固たる仮説である。なぜなら、今回の発見のように実証的にどうかということ以前に、理論的にもその方が筋が通ることがいくつかあるからである。少しみてみたい。

 

 まず、ダーウィンの進化論以降の研究の蓄積により、地球上のすべての種が最初の一つの種から発生したことはかなり確からしい。これによって「いかにしていろんな生物が生じたか」については説明がつく(「ダーウィン進化論の何がすごいのか」)。

 したがって問題は、その「最初の生命」がいかに誕生したかである。これには地球上での生命の定義、あるいは「生命に不可欠なものは何か」も考える必要があるが、今回のニュースに照らして、ひとまずアミノ酸についてみてみよう。

 そもそも、DNAの塩基配列が実際にコードしているのもアミノ酸である。そのアミノ酸の組み合わせでタンパク質が作られ、それがわれわれの身体の基本的な構成要素となっている。人体なら、20種類のアミノ酸から10万種類のタンパク質が作られている。

 そこで少し限定して「最初のアミノ酸はいかに生じたか」に問いを変えてみると、たとえばスタンリー・ミラーは、「原始地球において雷が落ちて、その際のエネルギーを使ってアミノ酸が合成された」というシナリオのもとで、放電実験を行っている。

 実験では、メタン・アンモニア・水素を混合した気体(原始地球の大気を再現したもの)に数日間にわたって1万ボルト以上の電気を流し続けたそうだが、すると確かに、グリシンやアラニン(いずれもアミノ酸の一種)ができていたという。

 もっとも、後に原始地球にはメタンやアンモニアはなかったことがわかって、この説は説得力がなくなってしまったのだが、あるいはその後も、地球における自然の営為は再現されていない。つまり、アミノ酸がいかに合成されたかは謎のままである。

 

 もちろん、「だから地球外から飛んできた」というのはまだ話が早すぎるが(とは言えアミノ酸くらいなら実際に隕石に乗ってきたのがすでに確認されているが、ここでは理論上の話を続けよう)、論理的に言ってその可能性が高い理由は他にもある。

 なかでも注目すべきは、地球上の大半の生物がもっぱら左型のアミノ酸ばかり利用しているという事実である。そもそも、アミノ酸には並べると左右対称になる「右型」と「左型」がある。そして、これはふつう半々の割合で現れるはずなのである。

 実際、試験管の中で化学反応を起こして合成した場合でも、あるいは先のミラーの実験でも、右型と左型の割合は等しかった。にもかかわらず、およそ全ての生物が左型ばかり利用しているのだ。これは、原初において左型が多かったと考えると説明がつく。

 要するに、もともと飛んできた中に左型のアミノ酸が多かったとすると筋が通るということだ。それなら左型を利用する生物だけが子孫を残したことになるから、現在にまで続くおよそあらゆる生物が左型への適応型だったとしてもおかしくはないのである。

 

 いずれにしても、今後の研究次第とは言え、ある意味ではもはや「母なる地球」という言葉でさえも「地球偏重的」になってきていると言えるだろう。われわれの祖先はおそらく地球では生まれておらず、何かの拍子に外から飛んできた可能性が高いのだ。

 そもそも、われわれの祖先の棲家たる「母なる海」ですら、40億年ほど前に彗星が次々と衝突したことで誕生したのであるし、ともかくわれわれは、地球ではなく宇宙の産物である。何となればアミノ酸だって、実は太陽系より古い可能性もあるのだ。

 

ますます眠れなくなる宇宙のはなし〜「地球外生命」は存在するのか

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