フリー哲学者ネコナガのブログ

人間にまつわること、哲学や科学、宗教、社会の問題、生き方のことなど書いています。基本的にエッセイです。

動物たちは冬をいかに生き延びているか

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 今週末は全国的に寒いようだが、ちょうどよく「動物たちが冬を生き延びる8つの方法」というのがあった。寒さに限る話ではないが、確認してみよう。

 

1.湯につかる

 名古屋は地獄谷野猿公苑のジャパニーズマカク(ニホンザル)が紹介されていた。ヒエラルキーで上にいるほど優先的に温泉に入れるらしい。冬に入って夏は入らないから、身体を温めるためにやっているのは確からしいとのこと。

 よろしければ以前に書いたサルの記事もどうぞ(デズモンド・モリス『サル─その歴史・文化・生態』~ヒトとサルの奇妙な関係)。

 

2.暖かい地域に移動する

 「渡り鳥」方式だが、やっているのは渡り鳥と人間だけのようだ。アマツバメはそのために着陸なしで200日飛び続けるのが確認されたとのことだが、考えてみれば鳥は飛んでいる方が普通だから驚くにはあたらないのかもしれない。

 ちなみに、アメリカの北部に住んでいるリタイア組のうち、寒さが嫌で一定期間フロリダやカリフォルニアなどに移動する人たちを「snowbirds」と呼ぶ。

 

3.雪の下に潜伏する

 雪はうまく使えば寒さを遮ることができる。人間からはエスキモーのイグルー(かまくらのすごいやつ)が紹介されているが、雪と地面の間に隠れる方式は無脊椎動物、小型哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類と幅広く見出されるとのことで、生態学者はこの習性を「subnivium」と呼ぶらしい(ラテン語。sub(下)+nives(雪))。

 

4.むしろ先に凍る

 アラスカには、冬になると自発的に「凍る」カエルがいるらしい。当地での1月の平均気温はマイナス28℃だが、彼らは糖と尿素となんだかよくわからない物質(まだわかっていないらしい)を使ってバリアを作り、春になると溶けて動き出すのだそうだ。

 

5.食糧を貯えておく

 人間は冬眠派の習性が残っているが(「食欲の秋」とかいって事前にたくさん食べる)、冬眠しない動物にとっては、冬の分の食糧は事前に蓄えておく必要がある。例えばナッツを埋めるリスは有名だ。ちなみに、これに関しては寒さへの適応よりも暑さへの適応の方が難しいとのこと。

 

6.動かない

 「冬眠」の本質は睡眠ではなく、エネルギーの節約である。ミシシッピアカミミガメは疑似「昏睡状態」に陥るのが得意で、数週間も呼吸なしで過ごせるそうだ(光にはしっかり反応するため、本当の意味での昏睡状態ではない)。

 

7.暗闇に適応する

 北極圏よりも北では、真冬には太陽が昇らないためとても暗い。そこでトナカイたちは、紫外線を「見る」ことができるのだそうだ。さらに網膜のうしろ側で光を反射するレイヤー状の組織も、夏はゴールドから冬はブルーに色が変わるとのこと。生物における「目の進化」にはやはり興味深いものがある。

 

8.密集方式

 集団でぎゅうぎゅうにかたまると、体温を保存することができる。塊が大きくなるほど熱が逃げづらい。もっともこれは、おしくらまんじゅうとは違うらしい。なぜなら、コツは押し合わないことだからだ。

 南極のコウテイペンギンは、隣のペンギンとわずかに触れる程度で、羽毛に圧力をかけることなく、かつ断熱機能をきちんと果たせる最適の距離を保っているのだそうだ。したがって一人動けば玉突き式に周囲が動くことになり、渋滞中の車のような動きになるとのこと。

 


Emperor penguins - The Greatest Wildlife Show on Earth - BBC

 

 さて、最後に人間はどうかと言えば、こうしてみれば少なくとも日本では、冬を「生き延びる」という発想自体がすでに遠いものとなっていると言えるだろう。いわゆる「文明の利器」である(もちろん「慣れ」というのはあるので、いつまでたっても何か不満は出てくるが)。

 寒さに対してはしっかりした家や暖房設備があるし、照明もあるから冬だからと暗いこともない。あるいは食糧はそもそも「生産」できるし、備蓄もお手の物である(ちなみに、こうした「人類らしい」機能を最初にまとめて果たした代表は「火」である:「人類にとって火とは何か~「火の使用」が人類史にもたらしたもの」)。

 もっとも、日射量が少なくなるのは事実だから「冬季鬱」が流行ったりはするが、これは知識が広まっていないだけで、対応は十分に可能である(要はセロトニンを出せばいいので、楽しいことをやりましょう)。あとは閉め切った空間にこもりやすいので病原菌がうつりやすいとかいうのもあるにはあるが、ペストのように蔓延するということは現代ではもはやない。

 ということで、全体的に言えば人類はすでに、少なくとも「生き延びる」基本は難なくクリアしていると言えるだろう。もちろん「文明の利器」をどう評価するか、人類の進化がこの方向でいいのかといったことは別の問題ではあるが、「対処しようと思えば対処できる」ということである。したがって、「寒さに耐えられない」と言って生産性を落とすくらいなら、さっさと対処した方がいいのは確かであろう。

 

 ちなみに、温度ということで言えば、人間が耐えられる気温の限界はわかっていない。一応、深部体温(体表面ではなく内臓など内側の体温)が35度以下で「低体温症」、30度以下で「意識がなくなる」とのことだが、このあたりはたぶん、物理的なフィードバックよりも高次脳での情報処理の影響の方が大きいのであろう(「寝たら死ぬぞ」というやつだが、「死んでしまう」という「思い」が強ければ強いほど本当に死んでしまうということ)。

 あと、深部体温ということでこの時期の睡眠について書いておくと、人間は眠りが深いほど深部体温が低く、深部体温が下がっていないとそもそも眠りに入れないから、寝る前は深部体温を下げる必要がある。つまり、いわゆる「身体の芯まで温まった状態」では、深い睡眠はとれない。深部体温は体表面の温度(外殻体温)とバランス関係にあり、一方が上がると一方が下がるので、表面の方を温めればよいということだ。おすすめは、起きている時も寝ている時も室温を一定に保っておいて、軽い布団で寝ること。

 

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