フリー哲学者ネコナガのブログ

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お経を読んでみよう(番外編)初学者におすすめの参考図書

 今回は「番外編」として、お経を読み始めた初学者が手元に置いておくと便利な本を紹介しよう。ここではとくに、これまでに紹介した範囲に関連の深いもので、現在でも書店で手に入りやすいものをあげておきたい。幅広く読み物や研究書を読むのもおもしろいが、仏教関係の書物は何しろ膨大なので、全体像を早めにつかんで自分の興味を知っておくと、スムーズに学びを蓄積することができる。

 

原始仏典 (ちくま学芸文庫)

原始仏典 (ちくま学芸文庫)

 

 原始仏典を「きちんと現代人に届くかたちで現代語訳すること」に尽力された中村元氏が、十一の経典をとりあげて原始仏教のエッセンスを紹介している一冊。もともと東京書籍から出ていた『原始仏典Ⅰ 釈尊の生涯』と『原始仏典Ⅱ 人生の指針』が合本で文庫になったもので、手に取りやすい原始仏教入門である。

 最初に原始仏典についての総論があり、次いで第一章から経典を多く引用しつつ解説する形となっている。ここから興味を持ったお経を次々と読んでいくのもありだろう。碩学中村氏が何気なく出す背景知識が、初学者にはとても役に立つ。

 

バウッダ[佛教] (講談社学術文庫)

バウッダ[佛教] (講談社学術文庫)

 

 上の中村氏と三枝充悳氏の共著だが、中村氏が最初と最後に論文を寄せて、大部分は三枝氏が書いている。現行のこの文庫版は三度目の出版だが、コンパクトな仏教通史として広く信頼されているものだ。「バウッダ」はサンスクリット語で「仏教者」の意味だが、二千五百年の歴史を持つ仏教を知るにあたって、こうした概説書はいつまでも頼りになる。

 

岩波 仏教辞典 第二版

岩波 仏教辞典 第二版

 

 書店でふつうにみられる現行の仏教辞典3~4冊を見比べた結果、私が最初に買ったのがこれだ。辞典となれば自分で実際に見て合うものを選べばいいが、私としては、収録項目の選び方や本文レイアウトの見やすさから即決であった。パーリ語やサンスクリット語の元の言葉が併記されているのもポイントである。付録として図解や地図、仏教史略年表もついている。

 仏教関係の書物を読んでいるとどうしても見慣れない言葉が出てくるから、辞典は必携のものとなるだろう。あるいは、仏教の歴史は解釈・発展の歴史であるので、あるところでわかったと思った言葉が別のところではまったく別の現れ方をしていることもしばしばだが、その意味で仏教辞典にも常に発見があり、読み物としてもおもしろいものがある。

 

原始仏典

原始仏典

 
大乗仏典

大乗仏典

 

 いずれも元々は筑摩書房から出ていた「世界古典文学全集」の一冊。のちにこうして函入りの単行本となった。『原始仏典』の方は残念ながら絶版状態だが、『大乗仏典』の方は今でも大きな書店ならばどこでも置いている。それぞれ代表的なお経の全訳と抄訳が収録されているが、初期仏教と大乗仏教のそれぞれのキャラクターを概観するのに便利な一冊だ。何しろ元が「文学全集」であるので、普通の読書家が通読できるように工夫されている。

 訳文については、解説にある通り「よみよいもの」であることだけを基準として翻訳者の味をそのまま出しているため「翻訳コンクール」の様相を呈していておもしろい。『大乗仏典』の方の巻末には、高崎直道氏による「仏教用語の手引き」もついている。

 

知恵と慈悲「ブッダ」―仏教の思想〈1〉 (角川文庫ソフィア)

知恵と慈悲「ブッダ」―仏教の思想〈1〉 (角川文庫ソフィア)

 

存在の分析「アビダルマ」―仏教の思想〈2〉

空の論理「中観」―仏教の思想〈3〉

認識と超越「唯識」―仏教の思想〈4〉

絶対の真理「天台」―仏教の思想〈5〉

無限の世界観「華厳」―仏教の思想〈6〉

無の探求「中国禅」―仏教の思想〈7〉

不安と欣求「中国浄土」―仏教の思想〈8〉

生命の海「空海」―仏教の思想〈9〉

絶望と歓喜「親鸞」―仏教の思想〈10〉

古仏のまねび「道元」―仏教の思想〈11〉

永遠のいのち「日蓮」―仏教の思想〈12〉

 

 総論的なもので定評があり、長く読み継がれているのは角川ソフィア文庫にあるこのシリーズである。全十二巻だが、今ではこうして文庫になったので入手しやすく、興味を持ったところから手軽に読むことができる。すべて日本の仏教学者による共著なので、それぞれの研究者のカラーを理解するとともに、多様な視点を得ることができる。ちなみにキンドル版なら一冊320円で買える。

 

インド思想史 (岩波文庫)

インド思想史 (岩波文庫)

 

 「仏教」というのも元々の位置づけとしてはやはりインドの長い歴史のうちにあり、思想風土やほかの宗教の存在を抜きにして語ることはできない。その意味で、気軽に手に入るものでおすすめなのが本書だ。深遠なインド思想の流れを概観できる一冊として定評がある。著者はサンスクリット語等に通暁しており、膨大な資料整理に献身した比較言語学の大家である。

 

 では、次回からはまたお経を読むことにする。


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