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フリー哲学者ネコナガのブログ

人間にまつわること、哲学や科学、宗教、社会の問題、生き方のことなど書いています。基本的にエッセイです。

社会化とナショナリズム─「社会化」の意味とそのはたらき

人間・自然・社会

nekonaga.hatenablog.com

 

 いま気づいたのだが、先日書いた上の記事の中で「社会化」という専門用語を説明なしで使ってしまっていた。このブログはなるべく日常的な言葉で書くスタイルをとっているので、「社会化」についてきちんと説明しておこうと思う。

 

 「社会化」というのは社会学における概念であるが、これは社会が成立していく過程を指しているのではない。大まかに言えば、ある個人がある社会の価値体系や規範意識を獲得する過程を指す。そうしたものを内面化することで、ある個人はその社会の中で言わば「ふつうに」ふるまうことができるようになる。つまり、行動にパターンができてくるのである。

 それは個人の側からみればある社会への適応であり、社会の側からみれば個人の取り込みである。たとえば、便宜的に「大阪人」と「大阪社会」なるものをおくと、ある人は「誰かがボケたらつっこむ」という行動様式を内面化することで、大阪人となり、大阪社会に適応できる、ということになる。

 この例では些細なものだと思われるかもしれないが(ただし大阪人にはこれがないと本当につらいということである)、こうした日常的で些細な行動様式、価値や規範の全体が「社会」という秩序を成り立たせるのであり、その微妙なバランスを崩すと場合によっては秩序が成り立たなくなってしまうのである。だから部分的に変更することは容易ではないとされる。社会とは一つの全体性であるから、部分が変われば全体も変わってしまうのである。

 詳細な定義は社会学者によって異なるが、いずれにしても社会化を担うのは多くの場合、第一に家族である。遺伝的、つまり先天的なものだけではなく、後天的な学習によって身につけるもの(広い意味での「文化」)も家族間で継承されがちなのは、多くの子どもはまず、「社会的なふるまいかた」を家族から学ぶからである。

 

 もっとも、「社会化」の対象は子どもだけではない。ある社会にいる大人が、別の社会に新しく入る場合もあるからである。典型的なケースは移民であろう。もっとも移民の場合は、移民たちの間で新しいコミュニティをつくることも多い。そのあたりはそこでの「社会」の定義によるであろう。どの範囲を一つの社会と呼ぶかは便宜的なものであり、ある社会とある社会の境界が定かでないばかりではなく、その大きさにも基準は存在しないため、たとえばわれわれは世界レベルで一つの社会の中にいるとも言えるからである。そう考えれば「国際社会」という言葉の意味はよくわからなくなってくる。

 

 これに関係して言えば、たとえば便宜的に一つの国を一つの社会とみなせば、ナショナリズム論でよくあげられるドイツ的ナショナリズムとフランス的ナショナリズムの対比がある。前者はフィヒテ、後者はルナンによる発想である。

 これは、一言で言えば「ドイツではドイツ民族であるものがドイツ人であり、フランスではフランス人の精神を身につけたものがフランス人である」というものである。ここではドイツ人は血縁に重きを置き、フランス人はつまり、社会化に重きを置いている。ドイツ人になるにはドイツ人として生まれる必要があるが、フランス人になるにはフランス語を話してフランス人らしくふるまえばよいのである。

 実際に、ドイツでは両親のどちらかがドイツ国籍であればドイツ国籍が付与されるが、フランスでは両親の国籍にかかわらずフランスで生まれればフランス国籍となる。ちなみにアメリカでは、そもそもアメリカ民族なるものは想定されないため後者型だが、両親の生まれにかかわらず本人がアメリカで生まれさえすれば大統領にもなれるというのは、結構すごいシステムであろう。

 もちろん両者の区別は便宜的なもので、実際には相互補完的なものではあるが、日本はというとあえて言えばドイツ型であろう。日本社会にどれほど適応していても、外国籍ならやはり「日本人」ではなく「日本かぶれ」とみなされがちであるし、帰化して日本国籍を取得した人も、いつまでたっても「帰化した外国人」であり、「日本人」とはみなされないからである。これは、時に単一民族神話と呼ばれるものでもある。

 

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